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初コーヒー
コラム076(2002/04/22)より

 今でこそ、コーヒーという飲み物はこの国でも最も一般的な飲み物となっているが、一般の人がコーヒーを口にするようになったのはそう古い話ではない。それはもちろん、戦後の話である。
以前、私の父から面白い話を聞いたことがある。私の父の叔父さんとかそういう関係の人の話らしいが、その人が仕事の関係で訪問した家で、生まれて初めてコーヒーというモノを出されたときの話であった。出されたコーヒーを見て、まず戸惑ったのがスプーン(その叔父さんは『スプーン』とは言わず、『さじ』と言ったそうですが)の使いみちだったというのだ。皿(コースターのこと)の上に乗っけられたカップの中のコーヒーを見て、とんでもなく上品でハイカラな飲み物を出されたと思い込んだ叔父さんは、てっきりコーヒーというものは、そのスプーンですくって飲むものだと思ってしまったらしいのである。それもどこから得た知識なのか、『西洋式ではさじは手前から奥に向かって動かして、すくって飲むもの』なんていうことが頭の隅にあったものだから・・・とんでもないことになったらしい。その後、叔父さんが顔から火が出るような恥ずかしい思いをしたということは、何故か私の親戚の間では知らない人がいないくらい有名な話なのであります。



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