004
診断
コラム023(2001/2/26)より

 家内が風邪をひいた。
今回はかなりひどいようで、もう3日も寝込んでしまっている。可哀想だが代わってやることも出来ないので、つらくても医者に診てもらいに行くように、と言った。
私達は家内の実家のすぐ近所に住んでいるので、町内には家内が子供の時からずっとかかりつけになっている開業医がいる。私も風邪をひくと、必ずその先生に診てもらうのだが・・・この先生の診断はいつも同じなのである。
まず、診察室に入ると「どうしました?」と訊いてくるので、これこれこういうわけでいつ頃からどこがどういうふうに具合が悪いのかを説明するのだが、残念ながら、先生はそういう話にはまるで興味が無いようだ。うなずきながらも顔には退屈そうな表情が見てとれる。そして、こちらの話が済むと、ようやく『私の出番だ』とばかりに愛用の懐中電灯を取り出して
「口をあけて。」
というのだ。
私が口を大きくあけると、先生は愛用の懐中電灯のスイッチをカチッと入れ、一言「ああ、真っ赤だ。」と言う。診断はそれで終わり。
私は窓口で薬を受け取り、帰るというパターンだ。
家内を医者に送りだしたものの、まさか、家内にも同じ診断はするまい、と思っていた私だったが、思いのほか早く帰ってきた家内にどうだったかと訊くと、
「のどが真っ赤だ、って言われたよ。」
などというではないか。「風邪ってことか?」と訊くと
「そうとは言われなかったよ、のどが真っ赤だって言われただけ。」
まさか、・・・と絶句した私だったが、家内はかなり調子が悪いらしく、すぐに布団にもぐり込んでしまったのだ。心配になって家内の顔をのぞきに行くと、熱があるらしく、真っ赤な顔をしながら家内は布団の中でつぶやいていた。
「考えてみれば、あの先生には子供の頃から『のどが真っ赤だ』ってことしか言われたことないような気がするなぁ。」

先生! 本当に大丈夫ですか?!




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