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コンビニのおにぎり
コラム176(2004/07/05)より

 コンビニ弁当の定番中の定番といえば『おにぎり』である。ご飯と海苔を分離して包装し、食べる際に手順通りに包装を剥いていってご飯に海苔をくっつける、という画期的なパッケージによって、一気にメジャーな存在となってもうどのくらいの年月が経っただろうか。あの画期的なパッケージを発明したという人を私は知っている(というか、何年か前、その人がかつて住んでいたという家を借りていたことがある)が、なんということもないそこらのおじいさんといういでたちの人である。特別、若い人の発想によるものではないというところがなかなか感慨深いものがあるのだが、しかし・・・、不思議なことに「年寄り」と呼ばれるくらいの年代のかなりのパーセンテージの人があのコンビニおにぎりのパッケージを正しく剥くことが出来ないのだ。それは面白い程である。だいたいにおいて年寄りは老眼でパッケージの小さな文字が読めない上に気が短く、さらにそのわりには食い意地だけは衰えていないものだから、あのコンビニおにぎりを手にすると、だいたい十人中九人以上の確率で、商品名や原材料、消費期限の印刷されているシールの部分を剥がし始める。やったことのある人ならわかるが、あの部分から剥がし始めると、いつまで経っても剥けないばかりかご飯の塊だけがゴロンと転がり出て、海苔はどうやっても出せなくなるのである。気の短い年寄りは食べ物を手にして、このいらだちに耐えきれず、「もう海苔なんかいらん」といった憮然とした顔つきでご飯部分だけを持ち、まさに握り飯状態でむさぼり始めてしまうのだ。それを見ている若者世代がまたそれをおかしがり、笑ったりするものだから、年寄りはさらに面白くないのだ。「誰がこんな面倒くさいものを考えたんだ!だいたいゴミばっかり増やして若者の考えることは全くけしからん!」そう叫ぶ爺さんを見ながら私は思うのだ。それを発明した人は、そう言うあんたとさして変わらないくらいの年代の人なんですけどね。



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